二人の距離~やさしい愛にふれて~
季節は移り替わり所どころに花が咲き始めるころ、恭吾は久しぶりに理花のマンションを訪れてみた。
もうひと月ほど来ていなかったからもしかするともう解約されてて中に入れないかもしれないと思いつつもマンションまで来ていた。
3階まで行き、部屋の鍵を開けようとすると鍵は開いたままだった。

前来た時に閉め忘れたかな?と思いながらドアを開けると廊下に男性が一人立っており、目が合った。
恭吾は驚いて思わずドアを閉めてしまった。

どうしよう?とその場で混乱していると中からドアが開き、中からは先ほどの男性が出てきた。

「誰?理花の知り合い?」

その男性は20台半ばくらいで黒髪で真面目そうな印象の人だった。

「あっ・・・・、はい。あなたは?」

「理花の兄です。じゃあもしかして通報してくれた人?」

恭吾はまさか理花の家族と鉢合わせるとは想像もしておらず驚いて言葉が出なかった。

「ははっ、そんなに驚かんでよ。人殺し~とか殴りかかったりせんけん。母さんがひどいことを言ったみたいで悪かったな。」

理花の兄という男性は恭吾に頭を下げる。

「あっ・・・、いえ、気にしてないです。」

「まぁ、玄関で話すのもなんやけん中にどうぞ。」

中に入ると段ボールが何箱かつみあげられ、恭吾が整理した棚は片付けられたのか空っぽだった。
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