二人の距離~やさしい愛にふれて~
「あのっ、この部屋もう解約するんですか?」

「ん?あぁ、もう戻ることはないやろうけん。大学はひとまず休学扱いらしいけどたぶん退学すると思う。」

恭吾は理花の現況を聞きたかったが聞いていいのか、聞いてどうするのかなど考えて俯いていた。
理花の兄はコーヒーを入れると恭吾の前に置いた。

「ありがとうございます。」

「このマットとか、この部屋にある食器とか一緒に買いに行ったんよ。嬉しそうに自分の好みのものを選んで。一日中連れまわされたんよ。まさかこんなに早く捨てることになるとか…。」

「あ、あのっ、り、理花は…」

「まだ精神科に入院しとるよ。けがはほぼ完治した。でもとりあえず生きとるっていう言い方がいいんかな?久々に会って驚いた。あんなにガリガリに痩せとって…。よく笑う可愛い子やったんよ。今じゃ感情がなくなったみたい。話しかけても理花の心には聞こえとらんみたい。」

「・・・・・・・・。」

「猫の人形、父さんが持っとたんやけど勝手に俺が理花に渡したんよ。そしたらさ、理花その人形見て笑ったんよ。それで芹沢君に会えんかなって俺が理花の部屋の片づけ役を引き受けた。」

「あの猫…良かった。理花に渡してもらえたんですね。俺に酒以外で欲しいって言ったのはあれだけなんです。だからどうしても渡したくて…」

「そうか、酒…か…。」
< 71 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop