二人の距離~やさしい愛にふれて~
しばらく沈黙が流れた。

「受け入れるしかないよな。俺が知ってる理花は酒とか、男とか無縁の内気な子で人一倍勉強を頑張ってたんよ…。なんでこんな事に…。」

頭を抱えて俯く理花の兄を見て恭吾は何と声をかけていいかわからなかった。

「…そうだ、理花にこの部屋の片づけに行くから欲しいものがあったら取ってくるって聞いたらさこの箱を持ってきてほしいって言ったんよ。今まで何言っても反応しなかったのに…。」

そう言いながら差し出された箱を恭吾は受け取ると開けてみた。
中には恭吾と一緒にゲームセンターに行ったときに取った太った猫の人形と恭吾が初めて泊まった日に残した手紙が書かれたレシートが入っていた。それと見たことのない小さな置き時計があった。

「これ…」

「やっぱり芹沢君との思い出やったんやな。この猫、理花に渡した猫と似てたけん同じシリーズのかなって。」

「ゲームセンターに一緒に行ったんです。本当は渡してもらった猫がいいって言ってたんですけど取れなくて…取れたのがこのデブ猫で…でもその時の理花嬉しそうにしてました。…この時計はわかりません。」

「俺さ、きっと理花は芹沢君に会いたいんやないかと思うんだ。でも両親がまだ受け入れきれんみたいで…。二人とも芹沢君が悪い人やないって警察から聞いて理解はしとるみたいやけど、もうこっちでのことを忘れさせたいみたいで…。」

「…はい。仕方ないです。実際会ったところで俺にできることは何もないんで…。」
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