二人の距離～やさしい愛にふれて～
「理花にお土産。」

そう言うと陽斗は大きなトートバッグの中から箱を取り出した。
それは理花から頼まれた恭吾との思い出が入った箱だった。
陽斗は顔を上げない理花の目に入るように手元の猫の前に箱を差し出した。

「これ…」

理花はすぐにこれが何の箱か気づき顔を上げた。

「ありがとう。」

以前は見なれていた理花の笑顔を本当に久しぶりに見れて陽斗は涙がこみ上げて来た。
それと同時に恭吾はやはり理花にとって本当に必要な存在なのだと確信する。

理花は手元の猫を自分の隣に置くと箱を受け取り、開けて中を見た。
デブ猫を取り出すとずっと握っていた猫の隣に置きしばらく笑顔で見つめていた。
その後、置き時計を手に取ると笑顔は消えまたじぃっと見つめる。次第に目からは涙が零れ始めた。
理花は涙を流しながら箱の中を見ると見慣れたレシートとは別にもう一枚紙が入っていることに気づく。
その紙を手に取ってみるとそれは恭吾からのメッセージが書かれてあった。

『飯食ってるか？いつか絶対に会いに行くから。』

理花はいつも恭吾が勉強している横で彼の書く汚い字を眺めていたから、このメッセージは他の誰でもなく恭吾が書いたものだとすぐにわかった。
その短い文面を読み終わると同時に更に目から涙が溢れ出した。

「っうぅ…恭ちゃん…」

箱を抱きしめるようにうずくまると嗚咽を漏らしながら理花は泣いた。
隣に座ってずっと理花を見ていた草野はそっと背中をさすって泣きやむのを待った。
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