二人の距離~やさしい愛にふれて~
「今は薬の効果で眠っていますし、看護師がいるナースステーションの横の観察室に今日は移動しましょう。」

草野は看護師に指示を伝えると恵子と面談室へ移動した。

「昨日の話は理花さんのお兄さんから聞かれましたか?」

「昨日って…芹沢君の話でしょうか?」

恵子はまだかすかに震えが残る手を握りしめた。

「はい。こちらに転院してきてもうすぐ2か月が経とうとしていますが私はまだまだ理花さんの気持ちが動き出すのに時間がかかると思っていました。ですが驚くほど芹沢君に対してだけは良い反応が見受けられるんです。」

「…そ、そうですか…」

「もし許可をいただけるようなら彼にも理花さんの治療に協力してもらいたいのですが…いかがでしょうか?もちろん、今すぐ返事をという訳ではなくご主人も交えてしっかりと話合ってみて下さい。」

「昨日、息子から話を聞いて主人と話はしていたんです…心配なのは…芹沢君と会うことによって理花はあちらでのことを忘れられずに苦しむのではないでしょうか?」

恵子達は出来るだけあちらでの生活を思い出さないように、忘れさせたいと思っている。
でも恭吾に会うことで思い出し、苦しみ続けるのではないかと心配していた。
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