二人の距離~やさしい愛にふれて~
そんな草野につられて陽斗と恭吾も笑う。
恭吾はスプーンを理花から取ると理花の口元に持っていく。

「みんな食べてる姿が見たいんだよ。さぁ!」

恭吾がスプーンを口に押し当ててくるから理花は渋々口を開いて食べた。
恭吾は空になったスプーンで今度は恵子の作った煮物を掬うとまた口元に持っていく。
戸惑った表情をする理花に優しく頷くと理花また一口食べた。

「うぅ、うっ、どっちも美味しっ…」

「そうか、良かった。いっぱい食えよ。」

恭吾の肩に顔をうずめて泣いてる理花の頭を撫でる。はす向かいでは恵子も手で口元を押さえて泣いていた。

「俺もいただきます。理花の好きな煮物、めっちゃ美味しそう。」

「うまいぞ。唐揚げも!」

そう言って恭吾と陽斗はおかずを取り皿に取り頬張った。
実際にほとんどご飯を口にして来なかった理花の胃はあまり受け入れられず、恭吾の作ったお粥を半分ほど食べるとお腹ががいっぱいになった。

草野は理花が食事をしているところを見届けるとニコニコ嬉しそうに出て行った。

「理花、草野先生が中庭に散歩行ってもいいって言ってたぞ。行くか?」

いつもは草野に無理やり連れて行かれているから理花はあまり中庭に出るのが好きではなかった。

「…どうしよう、二人で?」

「あ~、二人が良ければ?たぶんいいと思う。」

「じゃあ、行く。」

理花は恭吾と久しぶりに会えて嬉しいがその様子を母親や兄、看護師や草野に監視されているようで息苦しくもあった。
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