冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
未来は見えているというのに、鶴山さんの言った通りになったか……。
俺は内心頭を抱えたい気持ちになりながら、溜息をつく。
『ならば、あと二年待ってもらえんか。澪は昨年就職をして、生き生きと仕事を楽しんでいる。やり甲斐も出はじめた時期だ。今は娘のやりたいことを優先させてやりたい』
『……わかりました。澪さんが二十五歳になるまで待ちます。しかし、その間に櫻衣商事の経営が悪化するとも限りません。……その時は』
『ああ。余力が尽きる前に、二年を待たずして宗鷹くんの話を呑もう』
『そんな! 父さま、それはいくらなんでも姉さまが可哀想だ』
可哀想、か。……そうだな。反論もできず、嫌いな相手に嫁ぐなんて。
庇護したい相手に対して、酷い仕打ちをしているのは胸が痛いほど理解している。
当初は政略結婚をする予定などなかったのに、俺が結局それを望んだのは……恩人の会社を倒産させないためだけじゃない。
彼女が誰かのものになるという未来を想像して、腹の底から湧き立つような嫉妬心に堪えられなかったからだ。
俺とは違う男が、澪の前には必ず現れる。
俺は内心頭を抱えたい気持ちになりながら、溜息をつく。
『ならば、あと二年待ってもらえんか。澪は昨年就職をして、生き生きと仕事を楽しんでいる。やり甲斐も出はじめた時期だ。今は娘のやりたいことを優先させてやりたい』
『……わかりました。澪さんが二十五歳になるまで待ちます。しかし、その間に櫻衣商事の経営が悪化するとも限りません。……その時は』
『ああ。余力が尽きる前に、二年を待たずして宗鷹くんの話を呑もう』
『そんな! 父さま、それはいくらなんでも姉さまが可哀想だ』
可哀想、か。……そうだな。反論もできず、嫌いな相手に嫁ぐなんて。
庇護したい相手に対して、酷い仕打ちをしているのは胸が痛いほど理解している。
当初は政略結婚をする予定などなかったのに、俺が結局それを望んだのは……恩人の会社を倒産させないためだけじゃない。
彼女が誰かのものになるという未来を想像して、腹の底から湧き立つような嫉妬心に堪えられなかったからだ。
俺とは違う男が、澪の前には必ず現れる。