冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
もしその男が強制買収を仕掛けて、父親の地位を盾に無理やり嫁入りを迫ったら?
反対に、結婚すれば強制買収を見逃してやると脅してきたら?

……確実に彼女は頷かざるを得ないだろう。

想像しただけで、腑が煮え繰り返るほどの独占欲が身を焦がす。それならば俺の方が幾分かましだ。
俺なら彼女を庇護できる。彼女の心まで縛り付けたりしない。

そんな独善的な思考に支配されている俺を、湊征君は仇でも見るような視線で睨みつけた。



……それからの二年間は、澪を政略結婚に陥れた罪悪感で後悔に苛まれる日々だった。

彼女には相変わらず恋人もいないようだったが、淡い片思いを抱いているとも限らない。
そうであるのなら、二十五歳になる前までに、彼女が本当に愛した男と結ばれてほしい。そうすれば、彼女を深く傷つけずに済む。

心からそう願うと同時に、胸に巣食う仄暗い独占欲が激しく畝り、彼女が欲しくてたまらないと渇望する。

幸せになってほしいと願う反面、全てを手に入れたい貪欲な自分に反吐がでそうだ。
< 117 / 162 >

この作品をシェア

pagetop