冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
ぼーっと考えごとをしながら宗鷹さんを見つめていると、崇高な美貌の二重瞼が小さく震え、形の良い唇から「ん」と声がもれる。
あ、起きる。そう思った時には、彼のまどろむ瞳と目が合った。

「……おはよう。まさか、君が先に目覚めているなんて驚いたな」

「おはようございます。私も自分でびっくりしました。これも宗鷹さんのおかげです、ありがとうございます」

「礼を言われるようなことはしてないさ。隈もすっかり消えているし、良い傾向だな」

彼は目元をふっとやわらかく緩めて、愛おしげに私を抱き寄せる。
首をもたげて時計を確認してから短くあくびをした宗鷹さんは、まるで甘える猫のように鼻梁を私のつむじに擦り寄せてきた。

「もう八時か。土曜日だと思うとつい寝過ごしたくなる」

「そ、うですね」

普段の朝とは少し違う様子に、私は内心首を傾げて目を瞬かせる。
今朝は一体どうしてしまったのだろうか。

土曜日だろうがなんだろうが朝は顰めっ面が通常運転のはずだ。
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