冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
朝食を食べながらも『君をひとりにするのは心配だ』『今日は冷える。外出は控えるように』なんて、過保護に厳しく注意していたのに。
もしかして私が彼より早く起きたから機嫌が良い、とか?

「宣言しておく。君に対する遠慮はやめることにした」

「……へ? そ、そうですか」

ほら、やっぱりだ。彼は毎朝遠慮して早起きしてくれていた。

この三週間、私も彼より早く起きようと努力はした。せめて朝食の用意を、と思ってのことだ。
しかし『同じベッドで寝ているんだから同じ時間に起きてくれ』と注意され、たった二日で起床時間は揃えられた。

揃えられたと言っても、必ず彼の方が先に目覚めており、アラームが鳴るまで起こさずに待っていてくれる。
しかも起きたら起きたで、彼が手早く豪華な朝食を用意するものだから、家事下手な新妻には立つ瀬がなかった。

もしかして本当はそれが嫌だったけど、言いにくかったとか? ……うん、絶対にそうかも。
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