冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
なんでも孫のように可愛がっている良家のご子息がいて、『顔合わせの良い機会だ』と張り切ってクリスマスツリーやリースを用意していた。

私と湊征にとっては、東京で過ごす初めてのクリスマス。
しかも〝お兄さま〟を紹介してもらえるとなれば、長女で兄や姉に憧れていた私と男兄弟に憧れていた湊征としては、『サンタさんからのプレゼント、今年はいらない!』とはしゃぐほど嬉しかったものだ。

しかし、私が酷い高熱を出してしまってパーティーは中止。湊征は泣きわめき、私も朦朧とした意識の中ショックを受けていた。

私のせいで、お兄さまにも湊征にも悪いことを……。

そう思っていた矢先、お見舞いに訪れてくれたのがお兄さま――宗鷹さんだった。

話した内容は朧げだが、純白の洋菊が美しく咲き誇る花束を受け取った瞬間の手のひらの感覚と、甘く高貴な香りは今でも鮮明に覚えている。

しかし、翌日の朝。
眠りから覚めると、生まれて初めてもらった花束は、いつの間にか部屋から無くなっていた。
< 153 / 162 >

この作品をシェア

pagetop