冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「櫻衣商事の経営状況が悪化し始めたのは、五年前だったか。その頃から、菊永ホールディングス内で櫻衣商事の経営再建を行う買収計画が持ち上がり始めた。
君には知らされていないだろうが、その許可をもらうために櫻衣会長と話した際、正式に買収計画は決定している」
今から三年前、櫻衣会長が病床についていた日のことだ、と宗鷹さんは私の知らない祖父の話をし始めた。
全く知らなかったが、会長の座に就いていた祖父と彼には古くから親交があったそうで、祖父は数年前から時折将来を憂いていたらしい。
「君も知っての通り、櫻衣商事は創業当時から高級紳士服とファミリー向けの自社ブランドを主軸として成長してきた。だが現在は、お洒落で価格訴求力のある量販店の台頭で、自社ブランドの売り上げは数年に渡って低迷を続けている。
それでも、櫻衣商事が老舗アパレル企業として有名でいられるのは、百貨店の中でも富裕層向けのフロアに配置されている、高級紳士服ブランドのおかげだろう。しかし、すでに〝それだけ〟になってきている」
祖父は、櫻衣商事に忍び寄る暗い影に誰よりも早く気が付いていた。
このまま無駄に足掻いて会社を疲弊させてから民事再生手続きに入るよりは、M&A、つまり大手のアパレル事業会社に買収された上で吸収合併契約を早めに締結できた方が、会社としてもダメージは軽減されると考えていた。
君には知らされていないだろうが、その許可をもらうために櫻衣会長と話した際、正式に買収計画は決定している」
今から三年前、櫻衣会長が病床についていた日のことだ、と宗鷹さんは私の知らない祖父の話をし始めた。
全く知らなかったが、会長の座に就いていた祖父と彼には古くから親交があったそうで、祖父は数年前から時折将来を憂いていたらしい。
「君も知っての通り、櫻衣商事は創業当時から高級紳士服とファミリー向けの自社ブランドを主軸として成長してきた。だが現在は、お洒落で価格訴求力のある量販店の台頭で、自社ブランドの売り上げは数年に渡って低迷を続けている。
それでも、櫻衣商事が老舗アパレル企業として有名でいられるのは、百貨店の中でも富裕層向けのフロアに配置されている、高級紳士服ブランドのおかげだろう。しかし、すでに〝それだけ〟になってきている」
祖父は、櫻衣商事に忍び寄る暗い影に誰よりも早く気が付いていた。
このまま無駄に足掻いて会社を疲弊させてから民事再生手続きに入るよりは、M&A、つまり大手のアパレル事業会社に買収された上で吸収合併契約を早めに締結できた方が、会社としてもダメージは軽減されると考えていた。