冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
そこから導き出すに、祖父は私に遺したのは単なる十億円の株式ではなく、櫻衣商事の未来に関わる大きな決定権だったというわけだ。
祖父がその権利を私に相続をさせた理由はきっと、私が会社のために働きたいと常々話していたからだろう。
生涯を閉じようとするお祖父さまが、最期に櫻衣家長男の孫娘に託したのは、私という存在が櫻衣商事のためにすべきだった……本当の〝仕事〟。
それは就職でも、内部改革でもなく――宗鷹さんとの〝愛なき政略結婚〟だったのだ。
「君も知っての通り、俺からはすでにお義父様へ『娘さんが欲しい』と伝えてある」
宗鷹さんの大きな手のひらが私の頬を滑る。顎先に彼の長い指が添えられたかと思うと、クイっと持ち上げられた。
「だというのに、君は一人暮らしを始めようとしているんだって? お義父様から聞いたよ」
強制的に彼を見上げるような姿勢にされて、なんだか落ち着かない。
彼の美しすぎる相貌には支配する者の風格がにじみ出ていて、ひとたび視線が絡み合うと、逸らしてはいけない気がした。
「箱入り娘が、無謀もいいところだな。今さら君が一人暮らしをする理由はなんだ? まさか、結婚が嫌で逃げ出したわけじゃないだろうな」
祖父がその権利を私に相続をさせた理由はきっと、私が会社のために働きたいと常々話していたからだろう。
生涯を閉じようとするお祖父さまが、最期に櫻衣家長男の孫娘に託したのは、私という存在が櫻衣商事のためにすべきだった……本当の〝仕事〟。
それは就職でも、内部改革でもなく――宗鷹さんとの〝愛なき政略結婚〟だったのだ。
「君も知っての通り、俺からはすでにお義父様へ『娘さんが欲しい』と伝えてある」
宗鷹さんの大きな手のひらが私の頬を滑る。顎先に彼の長い指が添えられたかと思うと、クイっと持ち上げられた。
「だというのに、君は一人暮らしを始めようとしているんだって? お義父様から聞いたよ」
強制的に彼を見上げるような姿勢にされて、なんだか落ち着かない。
彼の美しすぎる相貌には支配する者の風格がにじみ出ていて、ひとたび視線が絡み合うと、逸らしてはいけない気がした。
「箱入り娘が、無謀もいいところだな。今さら君が一人暮らしをする理由はなんだ? まさか、結婚が嫌で逃げ出したわけじゃないだろうな」