冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「……それ、は」

意地悪な言い方をされ、思わず言い淀む。
この空気の中、実はその『まさか』の理由だとは言い出せない。

そんな私の心中を察したのか、宗鷹さんは「ふっ」と自嘲するように笑い声を漏らす。

「そうか。そうだろうな」

宗鷹さんはひとりで納得したように呟くと、ぎしりとベッドの上に膝を乗り上げる。そうして、もったいぶるような緩慢な動きで私の方へ顔を近づけた。

な、なに……?

互いの吐息が聞こえるほどの距離感に、ドキドキと心臓が早くなる。

「君のために『二十五歳になるまで待つ』とは言ったが……」

とん、とベッドの背もたれに彼の左腕が突かれ、彼の腕の中に閉じ込めれるようにして私は退路は阻まれた。

「あいにく俺は、三年目も待ってやれるほど優しくないんだ」

そう言って、彼は長い睫毛に縁取られた目を蠱惑的に細めて――なんの前触れもなく、私の唇にキスをした。
< 43 / 162 >

この作品をシェア

pagetop