冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
唐突な出来事に、私の頭は真っ白になった。意味がわからない。
何度も角度を変えながら強引に唇を貪るようなキスに、瞳がじわじわと熱くなる。

「んんっ……ふ、ぅ……っ」

初めてのキスにただただ翻弄され、息継ぎも上手くできない。
体の奥が痺れるように熱くなって、とろけてしまいそうだと思った。


それからどれくらいの時間、キスされていただろうか。
一瞬だったかもしれないし、長い時間だったようにも感じられた。

宗鷹さんは甘く艶やかな余韻を残しながら名残惜しそうにゆっくりと唇を離すと、「澪」と初めて私の名前を呼んだ。



「隣で一人暮らしをするくらいなら、君には今すぐにでも俺と結婚してもらう」



「え……っ」

なにを告げられたのか理解できず、彼を見上げる。

「人生は有限だ。櫻衣商事を真に憂う心があるのなら、無駄な時間は過ごすな」

冷たく澄み渡った琥珀色の瞳の奥には、私の知らない激情が揺らめいているように感じた。


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