冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす

普段は皇帝のごとく崇高で凛然とした雰囲気を纏っていて、なんだか冷酷そうで近寄り難いのに。
こんな時には、そんなに優しい表情をするなんて。
……困った存在なのは、二面性のある御曹司様の方だと思います。

「なにより、ひとり暮らしもできないような君をこのまま隣へ帰して、また倒れられても困る。倒れないにしても、体調不良になったりしたらどうするんだ。自己解決できる自信はあるのか？」

「うっ。それは……その、わかりません」

「だろうな」

尊大な態度で言われて、ぐうの音も出ない。
すでに多大なる迷惑を掛けてしまっている身としては、これ以上の失態を晒して迷惑をかけるよりは、確かに言われた通り大人しくしている方が賢明に思える。

どうしたものか、と頭を抱える私の返事を待たずに、宗鷹さんは「とりあえず夕食を作ってくる」と言い残して部屋から出て行く。

それから、およそ十五分後。私が寝せられている部屋へ彼が再び帰ってきた時には、ひとり分の小さな土鍋が運ばれてきた。

「胃に負担がかからない食事にしたが、食べられそうか？」

そう言って、彼はベッドサイドに腰掛ける。

「はい。あの、夕食まで出していただいて、ありがとうございます」

「俺の妻になる君を助けこそすれ、蔑ろにする理由はないからな」