冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
『就職よりも、良い縁談があれば早速進めましょう』
『それもそうだな。そう言えば、釣り書がいくつか来ていたはずだ』
父と母はふたりで納得した様子を見せると、善は急げとばかりに、ティーテーブルの上にお見合い写真を山積みにする。
娘が大学を卒業すると聞きつけ、父は会社関係者から、母は櫻衣商事の婦人会やお茶会の席で持たされたらしい。
『ちょっと、ふたりとも落ち着いて。結婚よりも、まずは就職が最優先事項なのに……!』
そんなやりとりを幾度も交わしているうちに、両親は渋々ながら私の希望を受け入れてくれた。
そうして今から三年前の春。
気合十分で臨んだ入社式で私が配属されたのは、なんと東京都新宿区にある十五階建ての本社ビルのエントランスにある、受付だった。
簡潔な文章で書かれた入社辞令書を手にしたまま、目を見張る。
……一体どうして? 私はこの本社ビルの五階にある、経営企画部を希望していたのに……。
その夜、帰宅して話を聞くと、私の配属先が受付に選定されたのは両親の意向と判明した。
どうやら私の知らぬ間に、『就職がしたいと言うのなら受付で会社の顔として働いてもらって、良い結婚相手を探そう』という結論で、ふたりの意見はまとまっていたらしい。
確かに、担当者以外の他社の人と顔を合わせる機会が少ない部署よりも、受付係の方が釣り書の相手とお目に掛かる機会も多い。
『それもそうだな。そう言えば、釣り書がいくつか来ていたはずだ』
父と母はふたりで納得した様子を見せると、善は急げとばかりに、ティーテーブルの上にお見合い写真を山積みにする。
娘が大学を卒業すると聞きつけ、父は会社関係者から、母は櫻衣商事の婦人会やお茶会の席で持たされたらしい。
『ちょっと、ふたりとも落ち着いて。結婚よりも、まずは就職が最優先事項なのに……!』
そんなやりとりを幾度も交わしているうちに、両親は渋々ながら私の希望を受け入れてくれた。
そうして今から三年前の春。
気合十分で臨んだ入社式で私が配属されたのは、なんと東京都新宿区にある十五階建ての本社ビルのエントランスにある、受付だった。
簡潔な文章で書かれた入社辞令書を手にしたまま、目を見張る。
……一体どうして? 私はこの本社ビルの五階にある、経営企画部を希望していたのに……。
その夜、帰宅して話を聞くと、私の配属先が受付に選定されたのは両親の意向と判明した。
どうやら私の知らぬ間に、『就職がしたいと言うのなら受付で会社の顔として働いてもらって、良い結婚相手を探そう』という結論で、ふたりの意見はまとまっていたらしい。
確かに、担当者以外の他社の人と顔を合わせる機会が少ない部署よりも、受付係の方が釣り書の相手とお目に掛かる機会も多い。