続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「お疲れさまでしたー」
奈津美は、定時で仕事を終え、心持ち急いで更衣室を出た。
エレベーターを待ちながら時間を確認する。五時十九分……これなら閉店までに間に合うだろう。
今日、奈津美は部屋の合鍵を作りに行く予定だ。勿論、旬のための合鍵だ。
エレベーターの扉が開く。乗っていたのは数人で、奈津美はその中に乗り込んだ。
エレベーターの中でも、奈津美は思考にふける。
こうやって部屋の合鍵を渡してもいいと思うのは、旬のことをそれだけ信用して、プライベートな空間を共有してもいいと思っているからだ。
いや、すでに共有してると言ってもいいかもしれない。週で一回はどちらかの家で過ごしていて、お互いの家の勝手はよく知り尽くしているわけだ。
それぐらいはその辺のカップルにとっては普通かもしれないが、奈津美は、それはそう簡単なことじゃないように感じている。
今まで付き合っていた男とは、ここまでの関係になれなかった。
奈津美にとって、旬が初めてだ。こんなに大事にされているのも、大事にしたいと思うのも、ずっと一緒にいたいと思うのも……
エレベーターが一階に着き、扉が開く。他の降りる社員の流れに乗って、奈津美も降りた。そしてロビーを通ってエントランスに向かう。
ずっと一緒にいたいってなると……やっぱり結婚?
思考はやはりそこに戻ってしまう。
でも、結婚となると、違う気がする。いまいちピンとこない。
というか、旬はいつかちゃんとした職に就く気はあるのだろうか。
いや、この考え方はやめよう。
カオルが言っていたように、まだ旬は十九なわけだし、仕事がどうのこうのというのは、昨日今日でなんとかなるような話ではない。
あたしと同い年として考えるからダメなのよね。意思さえあれば旬には可能性がないわけじゃないんだし。
奈津美はエントランスから外に出る。鍵屋に行くために、いつもと反対方向に歩き出す。