続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

 カオルのその言葉を聞いて、奈津美の思考は一瞬止まる。


「……はあっ!?」

 次に出たのは、生まれて初めてじゃないかというくらいの素っ頓狂な声だった。


「なっ……何言ってんの!? カオル!」


「奈津美から話聞いて一回行ってみたいなーってずっと思ってたのよねー。今日、丁度いいし、折角だから三人で行かない?」

 嫌な予感は的中した。カオルは、面白がっている様子だ。


 旬のバイト先の居酒屋は、奈津美と旬が出会った場所だ。

 しかし、それと同時に、奈津美が酔って店員に醜態を晒した店でもあるのだ。


 奈津美にとって、旬のバイト先の居酒屋というのは、行きたくない場所ワースト1に輝いているのだ。

 今までだって勿論、行こうと思ったことも、その近くを歩くこともしなかった。


 そんなこと、カオルは知っているはずなのに、絶対にわざとだ。


「いいっすね! 行きましょっか!」

 旬が乗り気で賛同した。


「ちょっと……旬! 焼肉は!?」


「いいよ。また今度で」

 焦る奈津美に旬は笑顔であっさりと答えた。


 さっきは焼肉で反応してたくせに……!


「あたしは嫌! 行かない! 絶っ対行かない! 行くんなら二人で行って!」

 奈津美は首を大きく横に振って断固拒否する。


「明らかにそれはおかしいでしょ。何で今日会った友達の彼氏と二人で居酒屋に行くのよ」


「それなら場所変えたらいいでしょ!」


「無理よ。もう二対一で決まってるんだから。ねー、旬君」


「ねー」


 今日会ったばかりだというのに、すでに旬とカオルは奈津美にとって強力なタッグとなっていた。



「い……嫌ー! あたしは絶対行かないから!」



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