続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「オッケー。亜紀さーん! お好み三つとビール三つお願いしまーす」
旬が少し離れたところにいる亜紀に向かって叫ぶ。
「はーい。お好み三つと、ビール二つと、沖田君はウーロン茶ね」
確認のための繰り返しを、亜紀はわざと変えて言った。
「えー! 何でですかー」
「当たり前でしょ。未成年にはお酒出せないの」
そう言って、亜紀はカウンターの中に入っていった。
「ちぇー」
旬は唇を尖らせて呟いた。
「いいじゃない、別に。それで普通なんだから。ていうか、ここに来たから飲めないんでしょ」
奈津美の言葉には、無意識に棘が含まれていた。
もしこの店じゃなかったら、酒を頼んでも誤魔化せたのに(どっちにしてもしてはいけないことだが)、と遠まわしに言う。
「何? 奈津美、根に持ってんの?」
カオルがからかうように言った。
「別にそうじゃないもん」
奈津美はふいっとそっぽを向いた。
「かーわいいなぁ、ナツは」
何のタイミングなのか、旬は奈津美の肩を抱き寄せようとする。
そうされる前に、奈津美は旬の手を掴んで、無言で旬の膝の上にその手を置く。
旬は寂しそうに奈津美を見るが、奈津美はそれに気づかないふりをして話を変える。
「そういえば、ここの店長って娘さんがいたのね。あたし、見たことなかったけど……」
「ああ、亜紀さん、大学行ってたから、その間はあんまり手伝いとかしてなかったらしいよ。俺も去年、亜紀さんが大学卒業して店を手伝うようになってから知ったから」
「そうなの……」
その話を聞きながら、奈津美はまた違うことに思考を働かせる。
去年大学卒業ってことは、あたしと多分同い年? それで結婚してるのね。
……何で周りの同い年の人は早く結婚するのよ。
そのつもりはなくても、なぜかそこに考えがいってしまう。
気にしすぎよね。考えないって決めたくせに……