続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「オッケー。亜紀さーん! お好み三つとビール三つお願いしまーす」

 旬が少し離れたところにいる亜紀に向かって叫ぶ。


「はーい。お好み三つと、ビール二つと、沖田君はウーロン茶ね」

 確認のための繰り返しを、亜紀はわざと変えて言った。


「えー! 何でですかー」


「当たり前でしょ。未成年にはお酒出せないの」

 そう言って、亜紀はカウンターの中に入っていった。


「ちぇー」

 旬は唇を尖らせて呟いた。


「いいじゃない、別に。それで普通なんだから。ていうか、ここに来たから飲めないんでしょ」

 奈津美の言葉には、無意識に棘が含まれていた。


 もしこの店じゃなかったら、酒を頼んでも誤魔化せたのに(どっちにしてもしてはいけないことだが)、と遠まわしに言う。


「何? 奈津美、根に持ってんの?」

 カオルがからかうように言った。


「別にそうじゃないもん」

 奈津美はふいっとそっぽを向いた。


「かーわいいなぁ、ナツは」

 何のタイミングなのか、旬は奈津美の肩を抱き寄せようとする。


 そうされる前に、奈津美は旬の手を掴んで、無言で旬の膝の上にその手を置く。

 旬は寂しそうに奈津美を見るが、奈津美はそれに気づかないふりをして話を変える。


「そういえば、ここの店長って娘さんがいたのね。あたし、見たことなかったけど……」


「ああ、亜紀さん、大学行ってたから、その間はあんまり手伝いとかしてなかったらしいよ。俺も去年、亜紀さんが大学卒業して店を手伝うようになってから知ったから」


「そうなの……」


 その話を聞きながら、奈津美はまた違うことに思考を働かせる。


 去年大学卒業ってことは、あたしと多分同い年? それで結婚してるのね。

 ……何で周りの同い年の人は早く結婚するのよ。


 そのつもりはなくても、なぜかそこに考えがいってしまう。


 気にしすぎよね。考えないって決めたくせに……


< 120 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop