続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「はい。おしまい」
奈津美のその声で、旬は目を開ける。
「え……」
旬はきょとんとしていた。
「ナツ……今の何?」
「旬がしてっていうから、キスしたんでしょ?」
奈津美はさらっと答える。
「……俺……ナツの唇の感触すらしなかったんだけど……」
「そりゃそうよ。だって、ここにしたから」
奈津美は旬の額の冷えピタを撫でる。
そう。奈津美は、旬の風邪がうつらないように、そこに唇をつけた。
よって、旬はそこに何かが当たった感覚はあっても、リアルな唇は感じることはできなかった。
「えー……せめてほっぺたとか……」
「だめよ。風邪うつるから」
「ケチー」
「旬」
奈津美は旬の唇にそっと触れた。
「大人しくしてたら、また今度ね」
奈津美としては無意識だったのだが、旬には十分効果があった。一瞬で旬は静かになった。
奈津美は、旬が大人しくなると台所へ行き、調理を始めた。
旬は布団にもぐり、ナツの表情と仕草を思い出す。
ああやって、不意に大人の魅力たっぷりなところを見せられるのに、旬は弱い。
あんなの生殺しだ……
旬は更に深く、布団に潜り込んだ。