続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「フルーツタルトとモンブラン、それからアイスストレートティーとアイスミルクティーになりまーす」
女子高生の声には気付いていないらしく、旬はいつもの仕事通りにトレイの上の注文の品をテーブルに置く。
「わっ。おいしそ」
ケーキを見てカオルはちゃんとした笑顔になる。
それを見て、奈津美はばれないようにほっと息をつく。
「旬君、奈津美がちゃんと働いてるって旬君のこと褒めてたわよ」
カオルが旬に言った。
「ホントっ?」
旬は笑顔で嬉しそうな顔を奈津美に向ける。
「カオル……別に褒めたわけじゃないでしょ。いつもの旬と比べたらちゃんとしてるって言っただけでしょ」
旬が調子に乗らないように奈津美ははっきりと言う。
「えー。ナツ、俺だってやるときはちゃんとしてんだぞー?」
旬は口を尖らせて言い返す。
「出来るんならいつもちゃんとしてよね。それに、さっきはちゃんとしてなかったでしょ」
「さっきはナツが来て嬉しかったからじゃん。もう我慢してるからしないよ。先輩にも怒られるし」
「ああ、そう。じゃあ早く戻らないとまた怒られるわよ」
屁理屈を言う旬に奈津美は呆れながら言った。
「分かったよー。じゃ、ごゆっくり」
少し名残惜しそうにしながら旬はそう言い、テーブルを離れた。
「すみませーん」
旬が三歩ほど歩いたところで、隣の女子高生が甲高い声で旬のことを呼んだ。
「はい」
旬は呼ばれたままにそのテーブルに向かう。
「お呼びでしょうか」
営業スマイルで旬は女子高生達の注文を待つ。
「あのぉ。沖田さんてー彼女いるんですかー?」
「……え?」
旬は予想外の質問に旬はきょとんとしている。
勿論それは、奈津美とカオルのところにも丸聞こえだった。
「やっぱりきたわね」
カオルは横目で見て、アイスティーにガムシロップを入れて混ぜながら言った。
「やっぱりって……」
「今までの話の流れだったら予想できたでしょ。まあ、どっちにしても結果は一緒だけどね」
そう言いながらカオルは面白そうな顔をしている。