続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「フルーツタルトとモンブラン、それからアイスストレートティーとアイスミルクティーになりまーす」

 女子高生の声には気付いていないらしく、旬はいつもの仕事通りにトレイの上の注文の品をテーブルに置く。


「わっ。おいしそ」

 ケーキを見てカオルはちゃんとした笑顔になる。


 それを見て、奈津美はばれないようにほっと息をつく。


「旬君、奈津美がちゃんと働いてるって旬君のこと褒めてたわよ」

 カオルが旬に言った。


「ホントっ?」

 旬は笑顔で嬉しそうな顔を奈津美に向ける。


「カオル……別に褒めたわけじゃないでしょ。いつもの旬と比べたらちゃんとしてるって言っただけでしょ」

 旬が調子に乗らないように奈津美ははっきりと言う。


「えー。ナツ、俺だってやるときはちゃんとしてんだぞー?」

 旬は口を尖らせて言い返す。


「出来るんならいつもちゃんとしてよね。それに、さっきはちゃんとしてなかったでしょ」


「さっきはナツが来て嬉しかったからじゃん。もう我慢してるからしないよ。先輩にも怒られるし」


「ああ、そう。じゃあ早く戻らないとまた怒られるわよ」

 屁理屈を言う旬に奈津美は呆れながら言った。


「分かったよー。じゃ、ごゆっくり」

 少し名残惜しそうにしながら旬はそう言い、テーブルを離れた。



「すみませーん」


 旬が三歩ほど歩いたところで、隣の女子高生が甲高い声で旬のことを呼んだ。


「はい」

 旬は呼ばれたままにそのテーブルに向かう。


「お呼びでしょうか」

 営業スマイルで旬は女子高生達の注文を待つ。


「あのぉ。沖田さんてー彼女いるんですかー?」


「……え?」

 旬は予想外の質問に旬はきょとんとしている。

 勿論それは、奈津美とカオルのところにも丸聞こえだった。


「やっぱりきたわね」

 カオルは横目で見て、アイスティーにガムシロップを入れて混ぜながら言った。


「やっぱりって……」


「今までの話の流れだったら予想できたでしょ。まあ、どっちにしても結果は一緒だけどね」

 そう言いながらカオルは面白そうな顔をしている。


< 141 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop