続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「悪いんですけど……言えないです」

 女子高生の方に視線を向けると、旬はゆっくり口を開いた。


「え……」

 様子の違う旬に、女子高生は口を噤む。


「俺、彼女がいるんで」

 そう言い、旬は振り返って奈津美の側にやってくる。


「え……旬……?」

 奈津美が小さく声をかけると、旬はにっこりと笑い、奈津美の座ってる椅子の後ろに立った。


 それにつられて、奈津美は旬を振り返ろうとした。


「ひゃっ!?」

 奈津美が振り返る前に、後ろから旬の手が伸びてきて、奈津美の体に巻きついた。


「これが俺の彼女です。流石に彼女の前でそういうことできないんで。ていうか、彼女の前じゃなくてもしませんから」

 旬は女子高生に向かってにっこりと微笑んだ。

 女子高生は唖然としている。


 そして奈津美は、一気に顔が熱くなるのを感じた。


「ちょ……ちょっと旬っ」


「おーきーたー!」


 困惑する奈津美の声と重なって、旬の後ろからおどろおどろしい声が聞こえた。

 それと同時に奈津美に巻きついていた旬の腕がビクッと動く。


「お……大川先輩?」

 旬はゆっくりと奈津美から手を離しながら後ろを振り返る。


 その視線の先には、鬼のような形相をした大川が立っていた。


「あ……あははー。すぐ戻りまーす」

 旬は笑いながら誤魔化している。


 それを見て、大川は小さく「ったく……」と言い、その場を離れていった。


「焦ったー……」

 旬は小声で言いながらほっと息をついた。


「まあ……そういうわけなんで、アドレス交換とかも無理なんです。すみません」

 旬は改めて女子高生に向かって笑顔で言った。


 女子高生の方は、何も言葉が出てこないようで黙ってしまった。


「それじゃ、ごゆっくりどうぞ……あ」

 女子高生達に営業スマイルを向けると、旬は思い出したように奈津美の方を向いた。

< 143 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop