続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「悪いんですけど……言えないです」
女子高生の方に視線を向けると、旬はゆっくり口を開いた。
「え……」
様子の違う旬に、女子高生は口を噤む。
「俺、彼女がいるんで」
そう言い、旬は振り返って奈津美の側にやってくる。
「え……旬……?」
奈津美が小さく声をかけると、旬はにっこりと笑い、奈津美の座ってる椅子の後ろに立った。
それにつられて、奈津美は旬を振り返ろうとした。
「ひゃっ!?」
奈津美が振り返る前に、後ろから旬の手が伸びてきて、奈津美の体に巻きついた。
「これが俺の彼女です。流石に彼女の前でそういうことできないんで。ていうか、彼女の前じゃなくてもしませんから」
旬は女子高生に向かってにっこりと微笑んだ。
女子高生は唖然としている。
そして奈津美は、一気に顔が熱くなるのを感じた。
「ちょ……ちょっと旬っ」
「おーきーたー!」
困惑する奈津美の声と重なって、旬の後ろからおどろおどろしい声が聞こえた。
それと同時に奈津美に巻きついていた旬の腕がビクッと動く。
「お……大川先輩?」
旬はゆっくりと奈津美から手を離しながら後ろを振り返る。
その視線の先には、鬼のような形相をした大川が立っていた。
「あ……あははー。すぐ戻りまーす」
旬は笑いながら誤魔化している。
それを見て、大川は小さく「ったく……」と言い、その場を離れていった。
「焦ったー……」
旬は小声で言いながらほっと息をついた。
「まあ……そういうわけなんで、アドレス交換とかも無理なんです。すみません」
旬は改めて女子高生に向かって笑顔で言った。
女子高生の方は、何も言葉が出てこないようで黙ってしまった。
「それじゃ、ごゆっくりどうぞ……あ」
女子高生達に営業スマイルを向けると、旬は思い出したように奈津美の方を向いた。