続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「だっ…ダメッ」
奈津美は両手を胸の前でクロスさせ、旬の手を止めた。
「え……?」
いきなりの奈津美の動きに旬はきょとんとした目で奈津美を見下ろしている。
「あの……旬。今日は……止めない?」
奈津美はおずおずと旬に尋ねる。
止めると言うのは、勿論、これからされるであろう恋人同士の交わりを、だ。
「えっ……何で?」
旬は目を丸くして聞き返した。
旬がそう言うのは無理もない。ここまできて、突然そんなことを言われても、素直に頷くことなんてできるわけないのだ。
「えっと……その……」
奈津美は、言葉を詰まらせた。
この場を切り抜けられる言い訳なんてなかった。
「今日は……ちょっと……ダメなの」
何か言わないといけないと必死に考えながら、奈津美は曖昧に言った。
「何で? 今日は大丈夫なんじゃないの?」
旬が更に聞いてくる。
確かに、大丈夫だ。旬はそれを分かっている。
先週も、旬が奈津美の部屋に泊まりに来て、その時は、奈津美の月のものの都合でできなかったのだ。
だから、旬に今日もそれを言い訳にできないとは言えないのだ。
「えっと……その、あのね……やっぱり、体の具合がよくなくて……」
必死に考えて、出た言い訳がこれだった。
食事の時に胃の具合がよくないとは言ったが、これで旬は納得するだろうか。
「……一回も無理?」
旬が、じっと奈津美の目を見て言う。
そうやって見られると、胸が痛んでしまう。
本当のことを見透かされてしまいそうだから目を逸らしてしまいたい。
しかし、そうする方が怪しいのでじっと視線は外さない。
「……うん。ちょっと……」
奈津美は、小さな声でそう答えた。
旬は何も言わずに口を尖らせた。
「ご……ごめんね?」
「いいよ。ナツができないんなら」
少し拗ねたような声の調子だったが、旬はごろんと奈津美の隣に横になった。