続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
昨夜の奈津美の『触らないで』という発言から、旬はずっと悩んでいた。
奈津美に背中を向けて目を瞑って、奈津美から何か言葉はないか待ってみたが、そのまま何も言わずに、ただ隣に横になった気配だけは感じ取った。
奈津美に背中を向けたのは初めてで、奈津美に触れずに寝るのも初めてで、旬は落ち着かずになかなか寝入ることができなかった。
そして今朝、浅い眠りから一人で旬は目覚めた。
隣は既に空で、台所から、何か音がする。それはいつもと一緒だった。
旬は体を起こし、ベッドから降りて台所に向かった。
台所では、奈津美がコンロに向かって朝食を作っていた。
「ナツ……」
旬は小さな声で奈津美を呼んだ。
奈津美はすぐに振り返る。
「あ……旬。おはよ」
奈津美はニコッと笑顔を向けて旬に言う。
「うん……おはよ」
笑顔を向ける奈津美に対し、やや戸惑い気味に旬も返す。
「朝ご飯ね、ホットケーキにしようと思ったんだけど……いいよね?」
奈津美の後ろを見てみると、フライパンの上にホットケーキの種が丸くしかれていた。
「うん」
ホットケーキという響きは単純に嬉しくて、旬は自然と笑顔になって頷いた。
「じゃあ焼いてるからその間に着替えてきてね」
「うん!」
旬は機嫌をよくして奈津美に言われた通りに着替えようと台所から出て行こうとした。
……が、ふとその足を止めて奈津美を振り返った。
「ナツ」
奈津美はコンロの方を向いてホットケーキを裏返そうとしている。
「何?」
作業の途中なので奈津美は旬の方を向かずに返事をした。
ホットケーキはフライ返しでくるりと綺麗に裏返された。
その面にはきつね色で丁度いい具合の焼き色がついていた。
そんな様子を視界に入れながら、旬は口を開く。
「朝のチューしよ」
奈津美は目を丸くして旬の方を見た。