続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
旬は、夕方からは居酒屋のバイトだった。これも、開店前の準備からだ。
カウンターテーブルを拭きながら、気分は、朝よりも沈んでいる。大川にあんな風に言われてからだ。
奈津美に、振られるかもしれない。そんな不安だけが、旬の胸の中を掻き回す。
勿論、旬は嫌に決まっている。しかし、どうしたらいいのか、分からない。
下手に謝ったらいけない気がする。とりあえず、何が原因かはっきりさせた方がいい。
しかし、思い当たる節が多すぎる。そうなると、全部か? となってしまう。
もしそうなら……謝っても謝りきれないのでは……
この思考のサイクルが、ずっとぐるぐると回っている。
「沖田。何呻いとんねん」
カウンターの向こうから声がして、旬は我に返る。
そこにいたのは浩平だった。
「コウさん……俺、呻いてました?」
旬には全く自覚のなかった。
「おお。何や腹でも壊しとんのか?」
それを聞いて、旬はため息をついた。
「壊れかけてるのは心ですよ……」
「は?」
浩平はポカンと口を開けた。
「……頭でも打ったんか?」
次に怪訝な顔をして言う。
「気分的にはそんな感じですけど……でも、多分そっちの方がマシです」
旬がぶつぶつと言うと、浩平は更に怪訝な表情になり、再び、はぁ? と、声を漏らした。
「回りくどいな。何やねん。何かあったんか?」
「はい」
旬は隠すことなくすぐ頷く。
「何があってん?」
「聞いてくれます?」
旬はカウンターから身を乗り出し、浩平に迫る。
「おう。聞いたる聞いたる」
浩平は大きく二回頷く。
旬はそれを見ていくらかほっとした顔になり、今悩んでいることを浩平に打ち明けた。