続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~



 旬は、夕方からは居酒屋のバイトだった。これも、開店前の準備からだ。


 カウンターテーブルを拭きながら、気分は、朝よりも沈んでいる。大川にあんな風に言われてからだ。


 奈津美に、振られるかもしれない。そんな不安だけが、旬の胸の中を掻き回す。


 勿論、旬は嫌に決まっている。しかし、どうしたらいいのか、分からない。


 下手に謝ったらいけない気がする。とりあえず、何が原因かはっきりさせた方がいい。


 しかし、思い当たる節が多すぎる。そうなると、全部か? となってしまう。


 もしそうなら……謝っても謝りきれないのでは……


 この思考のサイクルが、ずっとぐるぐると回っている。



「沖田。何呻いとんねん」

 カウンターの向こうから声がして、旬は我に返る。

 そこにいたのは浩平だった。


「コウさん……俺、呻いてました?」

 旬には全く自覚のなかった。


「おお。何や腹でも壊しとんのか?」

 それを聞いて、旬はため息をついた。


「壊れかけてるのは心ですよ……」


「は?」

 浩平はポカンと口を開けた。


「……頭でも打ったんか?」

 次に怪訝な顔をして言う。


「気分的にはそんな感じですけど……でも、多分そっちの方がマシです」

 旬がぶつぶつと言うと、浩平は更に怪訝な表情になり、再び、はぁ? と、声を漏らした。


「回りくどいな。何やねん。何かあったんか?」


「はい」

 旬は隠すことなくすぐ頷く。


「何があってん?」


「聞いてくれます?」

 旬はカウンターから身を乗り出し、浩平に迫る。


「おう。聞いたる聞いたる」

 浩平は大きく二回頷く。


 旬はそれを見ていくらかほっとした顔になり、今悩んでいることを浩平に打ち明けた。


< 179 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop