続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
『――しょうがねぇだろ。俺は家事なんか出来ねえし。大体、家のことは全部お前がやるって条件じゃなかったのかよ!』
『は!? 何それ、条件って。そんな風に言った覚えないし! 大体、あたしは家政婦じゃないのよ!』
どこかで聞いたことのあるフレーズだった。
奈津美にも、同じことを言われたことがあった。
あの時、奈津美が言ったのは、家政婦ではなく、母親だったが。
もしかして、この男は自分と同じような境遇なのではないかと思ってしまう。
『別にそんなつもりねえよ!』
『じゃあ何? あたしは金ヅル? あんたしょっちゅうあたしに金せびってくるもんね』
『せびってねえし! そのうち返すって言ってんだろ』
『そのうちっていつ!? あんたまともに仕事もしてないくせにいい加減なこと言わないで! しかもあたしが渡したお金でパチンコばっか行ってるでしょ!』
そこまで聞いて、旬はほっとした。
金銭の貸し借りでは、奈津美にともめたことはない。
パチンコとか、ギャンブルもしない。
何だ、全然違うじゃん。
旬は、胸をなで下ろす。しかしはたと思い止まる。
でも、奈津美の家のものを勝手に食べることは、似たようなことではないか。
奈津美の家のものは奈津美が奈津美の金で買っている。
それを勝手に食べることは即ち、旬が奈津美の金で食い潰しているということではないか。
それなのに、更に奈津美の家のものを食べるなんて……
旬には、自分がしたことが、悪い意味でとても大それたものだったという風に感じた。