続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
奈津美は腹を押さえ、赤面した。
旬には奈津美の表情は見えなかったが、耳まで赤くなっているのを見て、それを可愛らしく思った。
「……ほら、腹減ってるんだろ?」
頑なな奈津美に対しても、旬は優しく微笑んで言う。
奈津美が、ゆっくりと顔をお好み焼きに向けた。
……食べたい。……でも……
奈津美は、チラリと部屋の時計を見る。もう十一時半過ぎだ。
旬に太ってないと言われたからといって、やっぱり、こんな遅くに何かを口にするなんて、気が引けるのだ。
「……分かった。そんなに食べたくないんなら、俺が口移しで食べさせてやろうか?」
旬はそう言って、お好み焼きを口に運んだ。
「い……イヤ! 普通に食べるから!」
奈津美は再び顔を真っ赤にして、首をブンブンと横に振った。
それを見て、旬はお好み焼きを含んだ口でニヤリと笑う。
どうやら、奈津美が何を考えて躊躇っていたか、分かっていたらしい。
「初めからそう言ったらいいのに」
口の中のものを咀嚼しながら、旬は新たに箸でお好み焼きを一口大に分ける。
奈津美は、むうっと口を尖らせて旬を見る。
その視線に気付き、旬は手を止めてきょとんとする。
「あ、やっぱ口移しがいい?」
自分の口を指差して、旬は言った。
「嫌! それなら食べたくない」
少し冷たく奈津美は言い放つ。
「なんだよー。そこまで嫌がんなくてもさぁ……」
今度は旬が口を尖らせて、ぶつぶつと言いながら再び箸を動かす。
「じゃあ、はい。あーん」
旬は自分の口の中のものはすっかり飲み下し、再び奈津美の口に箸を近づける。
食べると言ってしまった手前、また食べないと言ったら、同じことの繰り返しになってしまうような気がする。
これだけ。この一口だけ。
奈津美は、そう自分に言い聞かせて、口に入れた。
すると、口の中に、しっかりとしたソースの味が広がった。