続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「そういえば……」
最後の一口を食べ終えたところで、奈津美はふと思い出して口を開く。
「ん?」
旬は、空になった器をローテーブルに置き、再び奈津美の隣に腰を下ろす。
「旬、何か言ってたじゃない?」
「何を?」
旬はきょとんとしている。
「ほら、さっき……あたしに色々悪いことしちゃって……とか、言ってたじゃない」
旬が、奈津美は自分に対して怒っているのだと勘違いして、謝った時のことだ。
あの時は、ただ唖然として聞き流していたのだが、今になって頭に引っかかったのだ。
「あ……あぁ〜……」
旬は、思い出し、そう言えば言っちゃったなぁ、と頭を掻く。
「……何したの?」
奈津美が訝しげに瞬間を見た。
「いやっ……別に? 何もしてないよ?」
そう言いながら、笑顔は引きつっているし、目も泳いでいる。
奈津美はそれを見逃さなかった。
「本当に何かしたの?」
奈津美が詰問すると、旬は首をブンブンと横に振った。
「し……してないって!」
「じゃあ何であんな風に言ったの?」
「そ……それは、その……な、ナツが怒ってんだと思ってたから……その、俺が気付かないうちに何かしたのかと思って……」
旬の言い方は、しどろもどろで、何か隠していることは、一目瞭然だ。
旬の嘘がつけない性格が仇となったようだ。
「本当に何もないの?」
旬の態度でバレバレなのだが、あえて奈津美はそう詰め寄る。
「うん! 当たり前じゃん!」
旬は力強く頷く。
「じゃあ何であたしの方を見ないの?」
奈津美は、じいっと旬の顔を見る。
「み……見てるよ、ちゃんと」
旬は、奈津美の顔を見て、目を逸らすまいとした。
しかし、真面目な瞳でまっすぐ見られると、旬の目は、文字通り、泳いで奈津美の目から離れてしまう。