続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「……旬」
奈津美はいつもより少し声のトーンを低くする。
その声も奈津美の視線も、まるで旬を突き刺すようだった。
やがて、観念したように、旬は脱力した。
「……だって、ナツ、絶対怒るし」
口の中で呟くように旬は言った。
「何したのよ、一体」
旬がこんなにひた隠しにするような悪事(?)をしていたなんて、奈津美には、何の心当たりもない。
「……怒んない?」
旬はチラリと奈津美の方を見た。
「聞かないと分からない。でも、隠される方が怒るよ」
奈津美は強気な態度で、さっきまでとは立場がまるで反対だ。
少し間を置いて、旬は言い辛そうに口を開いた。
「……えっと、まあ、色々あるんだけど。……前に、ナツんちの冷凍庫にあったおっきいアイス、勝手に食べちゃって……」
そこまでで、ひとまず旬の言葉が止まった。
「……それで? 食べちゃって?」
奈津美は話の先を促す。
「あ……あと、勝手にハム食べちゃって……ナツに食べたか聞かれても、食べてないって言っちゃって……」
「……それで?」
「それから……ゼリーとかプリンも食べて……」
思い出す限り旬は口にする。
考えてみると、思った以上に奈津美のものを勝手に食べていた。
旬にとっては、それが罪を重くし、奈津美の怒りを更に買ってしまう気がする。
そしてそれを覚悟し、旬は俯いた。
「……まさか旬。それであたしが怒ってるって思ったの?」
「……へ?」
怒気の感じられない奈津美の声に、旬は拍子抜けし、顔を上げた。
そこにあった奈津美の顔にも怒ったような感じはなかった。