続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
Episode 6
元カノ
それは、何てことのない、日曜日の出来事だった。
奈津美と旬は、街中を手を繋ぎながら歩いていた。
「腹減ったなー」
旬がぽつりと呟いた。
「えっ、もう? お昼食べたばっかりじゃない」
時刻は午後三時過ぎで、昼食は、一時頃に摂ったのだ。
「食べたばっかじゃないよー。もう消化されたし。なあ、ナツ。サ店かどっか行こー?」
旬が何となく甘えを含んだ言い方で言う。
「……もう。しょうがないなぁ」
そんな風に言いながらも、本心は行ってもいいと思っている。
今日は特に目的のないデートだし、この暑い中を歩くより、どこか涼しいところでのんびり休むのもいい。
「やった。じゃあ行こ」
旬は本当に嬉しそうに笑う。
それを見て奈津美も笑みを浮かべた。
「俺、パフェにしよっかなー」
「まだお店も決まってないのに? 今から行くとこにはないかもしれないよ?」
「んじゃパフェがあるとこにしよ。今、俺すっげーパフェの気分だから」
まるで女の子のような発言を聞いて、奈津美は思わず笑った。
そんな風に、取り留めのない会話をしながら歩いていた時だった。
「……旬?」
二人が歩いている前方から、不意に呼ばれた。
「え?」
旬は反応し、顔を横の奈津美から正面に向ける。
奈津美もほぼ一緒に、声の方に向いた。
そこには、奈津美にとっては初めて見る女が立っていた。
二十歳前後ぐらいの、一目で可愛いと思う風貌の女だ。
白い肌に、垂れ目気味の大きな目が印象的で、自然な茶色のボブヘアーが顔の小ささを際立たせている。
デニムのミニスカートに膝丈の黒のレギンス、それに黄色地にピンクの蝶のプリントされたTシャツというシンプルな恰好。
それでも余計な肉のついていない体つきと、そうでありながらTシャツを押し返す胸の膨らみは、彼女のスタイルの良さを引き立てているようだ。
「……ミキ」
小さな声で、旬が呟いた。とても驚いたように目を見開いて、ほとんど、無意識のようだった。