続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
それから丁度いい喫茶店を見つけ、一息ついた頃。
「……あっ」
奈津美は思わず声を上げてしまった。
「何? ナツ。どしたの?」
旬はパフェのスプーンを銜えたまま、きょとんとして奈津美を見た。
「ううんっ。何でもない」
奈津美は慌てて首を横に振り、ストローでアイスティーを一口飲んだ。
「えー? ホントに?」
流石に怪しく映ったのか、旬はじっと奈津美のことを見る。
「うん、ホントに。……えっと、その……そう。帰りに、スーパー寄らないとって思い出して。食料品買わないと、ないから」
奈津美は苦し紛れに適当に言い繕った。
逆に不審に思われただろうか……
「ふーん? そっか」
旬は特に何も思わなかったらしく、パフェを食べることに意識を戻した。
よかった。一先ずほっとしながら奈津美は胸を撫で下ろす。
思い出したのだ。さっき会った『ミキ』の名前をどこで聞いたのか。
確か、冬に、カオルと一緒に行った居酒屋で。
偶然隣に座っていた、旬の知り合いの話を盗み聞きしていた時に出た名前。
その時の話の重点はそこではなかったし、奈津美自身、他のことに意識がいっていたので、すぐには出てこなかった。
思い出してみると、複雑な思いが更に募る。
さっき会ったミキが、旬の元彼女。
可愛い子だった。
そういえば、旬が付き合うのは、皆いい女なのだと、旬の知り合いは言っていた。
当たり前だが、奈津美は、自分もその中に入っているとは思えない。
さっきのミキは間違いなく『いい女』に含まれている。
そしてそれだけのことだけあって、万人受けするような美少女だ。
おそらく、ミキ以外の、旬が今まで付き合っていた彼女も、同じようなタイプなのだろう。
……いや。今、気になるのは、そんなことではない。
さっきの、旬とミキのぎこちないような妙な雰囲気だ。
あの感じだと、二人は別れてから一度も会ったことがないようだ。
そして、これは奈津美の推測でしかないが、別れ方も、あまりすっきりしたものではなかったのではないだろうか。