続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「ナーツー? 溶けちゃうよ?」
旬の言葉にはっとする。
「え……あ」
奈津美が口を開けた瞬間、冷たいものが入ってくる。
「ん!」
驚きで目を見開いたが、次第に口の中にバニラの味が広がっていく。
旬が奈津美の口にスプーンを差し込んだのだ。
「おいし?」
スプーンを取りながら、旬が嬉しそうに尋ねてくる。
奈津美は今更ながら真っ赤になる。
恥ずかしいことをさせられてしまった。喫茶店で堂々と、彼氏にパフェを食べさせてもらったのだ。
「しゅ……旬!」
口の中のものを飲み下し、奈津美は旬をキッと見た。
「エヘへ。ナツ可愛いー」
旬はとろけそうなぐらいに顔を綻ばせた。
「もうっ……何言ってんのよ」
照れ隠しに、奈津美は顔を横に背けてアイスティーを飲んだ。
旬の、奈津美に対する『可愛い』は、いつもなら、照れながらも嬉しい言葉だった。
この『可愛い』は、世間一般の褒め言葉ではなく、旬のたくさんの愛情が凝縮されたようなものに感じるからだ。
でも、今日は喜べなかった。
勿論、嬉しい言葉であることには変わりない。
それでも、今日は、違うことまで考えてしまう。
この言葉も、きっと今までの彼女に言ってきたことなのだろう。
さっきのミキだって、十分可愛いと言えるのだから。
こうやって、旬の一言に、一挙一動に、旬の今までの彼女との付き合いを垣間見ているような気がするのだ。
そんなことを気にしていたらキリがないことは分かっている。
旬と奈津美は、お互いがお互いに、初めての相手ではないのだ。
それに、奈津美の方が四年長く生きている分、旬よりその相手は多いだろうし、奈津美は、絶対に旬に言えないこともしてきた。
それなのに、奈津美だけ旬の過去に口出しをするなんて勝手なことはしてはいけないのだ。