続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「奈津美さん?」
黙って、動きも止まってしまった奈津美の顔を、加奈が不思議に思って覗き込む。
「あ、ううん。何でも」
ないと言いかけて、奈津美は止まった。
「ねえ、加奈ちゃんと涼介君って、旬と昔から仲いいのよね?」
ふと思いついたことを、奈津美はそのまま口にした。
「え? あ、はい。昔からって言っても、私は高校からですけど」
「俺は中学から一緒ですよ。それがどうかしたんですか?」
「うん……その、大したことじゃないんだけど」
迷い、躊躇いながら奈津美は、言葉を紡いだ。
「涼介君達は……旬が前に付き合ってた彼女のこととか、よく知ってるのかなって思って……」
言った後に加奈と目か合い、その瞬間、奈津美はハッとする。
「ご……ごめん! こんなの、聞いていいことじゃないよね」
奈津美は慌てて謝った。
うっかり忘れてしまっていた。
加奈は昔、旬のことを好きだったのだ。
いくら今、涼介とうまくいっていても、昔のことを思い出す話は、したくないだろうに……
何も考えずにこんな無神経なことをしてしまうなんて、気持ちに余裕のない証拠だ。
「何でそんなに謝るんですか?」
加奈は、奈津美がそこまで慌てるのを、不思議そうに首を傾げている。
これだと、もしかしたら、加奈は奈津美が旬と加奈の昔のことを知ってるとは思っていないのかもしれない。
「あ、あー……別に昔の話ですし、今は関係ないですよ」
涼介も少し焦った様子でフォローする。
広い意味で取れる言葉だから、旬と旬の元彼女のこととも、旬と加奈のこととも取れる。この場合は後者だろう。
しかし、涼介まで慌てるのを加奈は訝しんでいる。
そしてすぐにピンときたようで、目を見開いて涼介を見た。
「涼介っ……まさか奈津美さんに高二の時のこと言ったの?」
なかなか鋭い勘をしている。その通りだ。