続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

 ……て、あれ?


 考えていて、奈津美はふとしたことに気付く。


 奈津美が旬と付き合い始めたのが二月半ば。

 私立だったら、大学入試やその結果発表もそれぐらいではないだろうか。


 ということは、旬は、ミキと別れてかなりすぐに奈津美と付き合い始めたということか……



『彼女って、ミキ?』

『違う違う。ミキのすぐ後』



 断片的に、居酒屋での会話が蘇る。


 あの時、確かにそう言っていた。


 『すぐ後』というのは、本当に『すぐ』であったということだろう。


 なんだ。そうだったんだ。


 奈津美は、妙にがっかりしたような気持ちになった。


 ……いや、前の恋人と別れてからの間でいうと、明らかに奈津美の方が短い自信があるが。

 何て言っても別れて翌々日だ。


 そんな奈津美が今更、旬の元彼女のことをどうこう言う資格はない。


 それは分かっているけれど……



「奈津美さん?」

 再び加奈から声を掛けられる。


 また黙り込んでしまった。


「……ごめん、何でもないの」


 奈津美は、表面上だけでも笑おうとしたが、顔の筋肉が上手く動かなかった。

 自分でも上手く笑えていないのが分かる。


「あたし、そろそろ帰るね」

 奈津美は力無く言って立ち上がった。


「ごめんね、色々聞いちゃって。でも、ありがとう」


「……いえ」


 涼介と加奈は、心配そうに奈津美を見ている。

 しかし、掛ける言葉も見つからないようで、ただじっと見つめているだけだ。


「じゃあ、またね」


「はい……さよなら……」


 軽く二人に手を降って、奈津美は店を出て言った。


「……あたし達、余計なこと言ったのかな」


「……言っちまった……のか?」


 涼介と加奈は顔を見合わせ、二人してうーんと唸った。




 奈津美はぼんやりとしながら歩いていた。


 何をそんなに気にしているのだろうか。自分でもよく分からない。


 ただ漠然とした焦燥感が胸に残っていた。


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