続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
二人を席に案内し、メニューを渡して、旬は他の仕事をする。
そして、五分ほど経った後。
「おい、店員。注文」
近くを通りかかったところで、田中が声をかけた。
「はい。……ていうかさ。そんな呼び方するなよ。感じ悪いだろ」
席に向かうと、旬は、他には聞こえない声のトーンで言った。
「うっせぇ。こっちは客だぞ。店員をどう呼んだっていいだろ。クレームつけんぞ」
どうやら田中は、さっきのことを根に持っているらしい。機嫌が悪い。
旬は、本当にこんな客がいたら嫌だなぁと、口には出さずに思った。
「……あれ? 彼女は?」
今更ながら、旬は田中の正面の席に誰も居ないことに気付いた。
さっきは、そこに座っていたはずだ。
「トイレ行ってる。それより注文。アイスストレートティーとアイスコーヒーと、ミルフィーユ一つ」
「はいはい。かしこまりましたー」
旬は伝票に注文を書き込む。
「……なあ、旬」
突然、田中が神妙に話しかけてくる。
「ん? 何」
旬は伝票から顔を上げて言った。
「旬ってさ、ミキと、別れてから会ってるのか?」
「え……」
予想もしなかったことを聞かれ、旬は目を丸くした。
「何だよ、いきなり」
すぐに質問には答えられず、旬は聞き返してしまった。
「いや、別に深い意味はないけど……俺の彼女、ミキのツレだから、何となく思い出したんだよ」
「へえ。んじゃ、田中の彼女って、ミキの紹介?」
田中は、旬がもし受かっていたら進学予定だった大学に行っている。
そしてその大学は、ミキと同じだ。
「紹介とは違うけど……まあ、大体そんなとこか。んで、どうなんだよ? ミキと会ったのか?」
話の論点がズレそうになるのを、田中が元に戻す。
「いや、会ってな……あ。違うわ。こないだ会ったんだ。めちゃくちゃ偶然だったけど」
思わず、会ってない、と言いそうになったが、先日のことを思い出し、そう言った。
「偶然?」
「うん。俺、彼女と一緒に歩いてて、道でばったり。軽く挨拶して終わりだったけどな」