続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「ふーん。今カノと元カノが会ったのか。……修羅場か?」

 最後の方には、若干の冗談が含まれてるようだ。


「んなの、なるわけないじゃん。ミキとは終わってるんだし」


「ふーん。そりゃそうか。ま、今カノが元カノだって分かることもないしな」


「うん……あ。でも、後で、さっきの元カノ? って聞かれたけど。だから、そうだって言ったし」


「へえ? やっぱり女は勘が鋭いんだな」


 奈津美がミキのことを感づいたのは、実は田中達の話を聞いたからなのだが、そんなことは知る由もない。


「……ていうかさぁ」

 田中が少し迷いながら、話を変える。


「ミキ、旬と別れてから、誰とも付き合ってないみたいだぞ」


「……え?」

 旬は、まさに鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。


「俺も学部違うからミキに会うこと少ないけど、俺の知ってる限りでは全然噂も聞かないし。俺の彼女が言うには、何回か告られたりしてるらしいけど、全部断ってるって」


 田中が何を言いたいのか、鈍い旬でも何となく感づいた。


 自惚れているようであるが、ミキは旬にまだ未練があるのではないかということだ。


 しかし、それはないはずだ。

 あの時、別れを切り出したのはミキの方なのだから。


 旬が何も言えないでいると、田中の彼女が戻ってきた。


 彼女には、二人がしていた会話が分かるはずもなく、きょとんとして旬と田中を見比べている。


「……悪い。余計なこと言った。気にすんな」

 田中は気を使ってか、苦笑混じりに言った。


「あ……うん。それじゃ、戻るから」


 そうして旬は、田中の彼女の方に『少々お待ち下さい』と無意識に笑顔を作って言い、その場を離れた。




(ミキ、旬と別れてから、誰とも付き合ってないみたいだぞ)

 旬の耳には、田中のその言葉が残っていた。



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