続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「ナツ、今帰り?」
不思議に思う奈津美を余所に、旬は笑顔で聞いてくる。
「う……うん」
「じゃあ、送ってくよ。俺も今日はもうバイトないし」
そう言いながら旬は奈津美に手を差し出す。
「うん……」
奈津美が旬の手を取ると旬が指を絡めて握ってくる。
そして、何かを確かめるように、ぎゅっぎゅっと何度も奈津美の手を握り直している。
歩き始めてからも、いつも以上に距離が近い。繋いだ手が旬に当たるぐらいだ。
嫌なわけではないけれど、何だか違和感があった。
しかし、結局そのまま、何てことのない話をしながら奈津美のコーポへと歩いていった。
「送ってくれてありがと。ここまででいいよ」
コーポの前まで来て、奈津美は立ち止まった。
「いいの? 部屋まで送るのに」
旬が残念そうに言う。
「うん。大丈夫よ。もう階段だけだし」
「そう……?」
旬は少し寂しそうな目をする。
奈津美との別れ際、そんな目になるけれど、何となく今日は違う気がする。
「んー……じゃあー」
旬は何かを確認するように周りを見回すと、両腕を奈津美の体に回し、抱き寄せた。
「ちょっと……旬! こんなところで……」
突然の旬の行動に、奈津美は驚きを隠せない。
「大丈夫だよ。誰も居ないから」
旬はそう言って離そうとしない。
「だからって……」
確かに、今は他に人影は見当たらない。
しかし、こんなところでは、いつ人が現れてもおかしくはない。
「あー……落ち着く」
旬は奈津美の頭に頬をすり寄せて独り言のように言った。
「旬……?」
やっぱり、変だ。
何がどうというのは分からないけれど、直感的にいつもと違うのではないかと感じた。
何かあったのだろうか。