続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「……旬、どうかしたの?」

 奈津美は旬を見上げて言った。


「ん? 何もないよ?」

 旬はニッコリと笑っている。しかし、それすらも不自然に見える。


「……んじゃ、もう帰るな」

 旬はそっと奈津美から手を離した。


「旬……やっぱり、ちょっと寄ってく? あ、ご飯食べていかない?」

 奈津美はそう言って、旬の様子を伺った。


 旬は一瞬だけきょとんとして、すぐにニンマリと笑った。


「いいの?」


 そして奈津美の耳元に手を添えて、まるで内緒話をするかのように続ける。


「俺、ナツも一緒に食っちゃうよ? 我慢できないから」


「なっ……」

 奈津美の顔が一気に真っ赤になった。


「何言ってんのよ! もういい!」

 奈津美はぷいっと横を向いた。


「怒んなよぉ。つうか、怒っても可愛いだけだよ?」

 旬は指で奈津美の頬をつつく。


「知らない!」

 奈津美はムキになって、旬の方は向こうとしない。


 旬はそんな奈津美を見ながらニヤニヤと笑い、素早く奈津美の頬に唇を寄せ、ちゅっと音を立てて触れた。


「なぁっ……!?」

 奈津美は手で頬を押さえ旬の方を見る。


「何考えてんのよぉ!」

 あまりの恥ずかしさに耳の方まで熱くなっている。


「照れんなってー。嬉しいくせにぃ」


「嬉しくない!」


 奈津美はムキになって言い返した。


「もうっ! 帰るんでしょ! それならさっさと帰る!」


「ナツー? そんな怒るなよぉ。あとでちゃんとラブコールすっから」

 そう言って、旬は指先で奈津美の頬に軽く触れた。

 奈津美がじっと旬を見上げると、旬は『な?』と、まるで小さな子供に言い聞かせるように言う。


 奈津美は何も言わずに頷いた。

 しかし、別に旬が後で電話をくれると言って、それに納得して頷いたわけではない。

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