続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
何を言ってるんだろう。
旬の気持ちを聞く前に、奈津美の気持ちを言ってしまった。
旬のことを支えたいだとか、そんなことを思っておきながら、こっちが先に弱音を吐いてしまっては、旬だって言いづらくなってしまうのに……
しかし、次の瞬間、奈津美の体は温かいものに包まれた。
気づいたら奈津美は旬に抱きしめられていた。
まだ靴を脱がずに玄関に立っている旬とは、段差のせいでいつもよりも身長差が縮まっていて、奈津美の顔は旬の肩の上にあった。
「ナツ……ごめん」
旬の顔が近い。すぐ耳元で声が聞こえる。
「旬……?」
奈津美はそっと旬の背中に腕を回した。
「どうしたの?」
いきなり謝られると、不安になる。
旬がどんな表情をしてるのか見ようとしたけれど、旬に力強く抱きしめられて、旬の顔が近くにありすきで、見られなかった。
「……本当は、ナツには言うべきことじゃないんだ。俺が一人で抱えないといけないことなんだ」
旬が言うことの意味が分からない。
何が奈津美に言ってはいけないことなのか……
「ナツ……俺、さっきミキに会った」
静かに言った旬の言葉に、奈津美はただ目を見開いた。
「でもっ……誤解しないで。別に、やましいことはなかったから」
奈津美の心臓が大きく脈打っている。旬にまで伝わってしまわないだろうか。
「……どうして、会ったの?」
何の感情もない声で奈津美は聞いた。
こんな時、どんな感情がふさわしいのか、分からなかった。
怒ればいいのか、悲しめばいいのか……
どちらも、正しいとは思えなかった。