続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「……どうして、旬が謝るの?」

 今度は奈津美から旬に手を伸ばした。


「謝らなくていいよ?」

 奈津美は旬の背中に腕を回して、そっと抱きしめた。


「あたしが聞いたことだから、いいよ? 旬は、あたしが聞いたから話してくれたんだよね」

 小さい子供にするように、奈津美は旬の背中を優しく叩いた。


「話してくれてありがとう」


 もしも奈津美が何も聞かなかったとしても、素直な旬の性格のことだから、きっと秘密にしておくことは出来なかっただろう。


 それに、人の気持ちを大切にしている旬だからこそ、こうして真剣に考えている。


 普通なら、彼氏が元彼女と会ったことに、憤りを感じるのかもしれない。

 奈津美にだって、全くそんな気持ちがないのと言えば嘘になる。


 だけど、優しい旬を、どうしても責めることはできなかった。


「ナツは、怒らないの?」

 旬が恐る恐るといった感じで奈津美に聞いてくる。


「怒らないよ。……怒ると思った?」

 少し微笑混じりに奈津美は言った。


「……どうだろう。怒るかどうかとは考えてなかったけど……でも怒らないわけないだろうなって」

 本当に特に考えてなかったらしく、言ってることが曖昧になっている。

 しかし……


「……それ、結局怒るってことじゃない」


「そっ……そうじゃないよ!」


 少し声の調子を変えて奈津美が言うと、旬か慌てた様子になる。


「もう……怒ってないし、怒らないから」

 奈津美は少し苦笑しながら旬を抱き締める力を込めた。


 そうすると、旬からも抱き締める力が返ってきた。


「……ナツの方が優しいじゃん」

 まるで呟くように旬が言った。


「え?」


「前にナツ、俺のこと優しいって言ったけど……ナツの方が優しいよ」


 旬の言葉に奈津美は目を丸くした。


「どうしてよ。旬の方が優しいじゃない」


 今回のことも、旬の優しさ故のことだったと奈津美は思っている。それなのに、どこが奈津美の方が優しいとなるのか。


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