続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「ナツのが優しいじゃん」
「そんなことない! 絶対」
「俺だって優しくないよ」
「旬が優しくないんだったら、あたしなんかが優しいわけないじゃない」
「そんなことない」
「そんなことあるの!」
お互いに引かないまま言い合って、間が開くと、どちらからともなく笑いがおきた。
「俺達、何言い合ってんだろうな」
「本当にね」
お互いに、優しい優しくないの言い合いなんて、端から見たらバカップルの褒め合いにしか見えないだろう。
「ねえ、旬」
奈津美はそっと片手を旬の頭に持っていく。
「旬は、元カノの……ミキちゃんのこと、どう思ってた?」
優しく頭をなでながら、旬に尋ねた。
「え……」
旬は戸惑ったように言葉に詰まっている。こんなことをきかれては、しょうがないだろう。
「本当のこと言って。私のことは関係なく」
そう言うと、少し間を開けて、旬が言葉を紡いだ。
「好きだったよ。……めちゃくちゃ好きで、大事にしたくって……その時の一番の気持ちだった」
旬の言葉を聞いた時、勝手ではあるけれど、奈津美の胸がちくりと痛んだ。
だけど、少しほっとしている。
奈津美の立場から言えることではないけれど、ミキの気持ちが少し分かる気がする。
同じ女として……いや、同じ旬を好きになったからこそ分かる気がするのだ。
「それなら大丈夫。……あたしが言うのはおかしいけど……でも、旬が一番大事に思ってたんだったら、きっとミキちゃんは幸せだったから」
奈津美も今そうだから、分かる。
旬が、奈津美を一番大切にしてくれている。
それが奈津美にとっての幸せだから。