続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「だって、自分で切ったら失敗するから。俺、昔自分で切って失敗してサルみたいになってさー。学校でめちゃくちゃ笑われたし」
よっぽど嫌だったのか、旬はむくれて話す。
「学校でだけならまだいいけど、バイト先でも客に笑われるし」
「それが嫌でお店で切ってるの?」
「うん。だって、居酒屋なんか酔っ払いが遠慮なくサルサル呼んでくるんからさぁ。流石にあれは腹立つっての」
珍しく旬が腹を立てている。
でもそれも仕方ないのかもしれない。客相手には言い返すわけにもいかないのだから、ストレスになってしまうだろう。
「せめて染めんのは自分でできたらいいけどさー。それも失敗するんだ。根元の方が上手く染めらんないから、染めた後もプリンになっちまってさ。だから、どうせ失敗すんならそれはそれで勿体ねえし、店でやって貰ってんの」
「そうなの……。でも、あたしはそっちの方が勿体ないと思うけど」
確かに、店でプロにやって貰った方が正確だし、仕上がりもいいだろう。
しかし、カットとカラーを合わせたら大体一万近くはかかってしまうのではないだろうか。
市販のカラーリング剤だったら千円もしないものだってあるのだし、それを考えるとやっぱり勿体無い。
「んー……そうだけどなー。……あ、そうだ。じゃあナツがやってよ」
思いついたように旬が言い、体を起こした。
「えっ……あたしが?」
奈津美は目を丸くする。
「うん。俺の髪染めて、前髪切って」
旬はにっこり笑いながら旬は頷いた。
「無理よ。あたし、人のはやったことないから」
髪を切るのも染めるのも、自分で自分のをやるのなら失敗してもいいと思ってできるが、他人のならそうはいかない。そんなの失敗するのが怖くてできない。
「いいよ、それでも。俺が自分でやるよりはいいもん」
「そんな、あたしだって失敗するだろうし……」
確かに旬の言う通り、髪を染めるのは自分一人より誰かにやってもらった方が上手くいくかもしれない。
それでもやったことのない奈津美には上手くできるか自信はない。