続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「じゃあ、やるからね」
改めて言って、奈津美は旬の髪にカラーリング剤をつけていった。
ボトルの櫛の形になっているキャップから液が出てきて、髪を梳かしながら満遍なくつけていく。
「あ、そういえば、旬、パッチテストとかしてなかったけど大丈夫なの?」
今更ながら気付いて奈津美が言った。
「パッチテスト……? ってなんだっけ?」
旬はキョトンとしている。
「なんだっけって……この液でアレルギーが出たりとか、かぶれたりしないかって使う前にテストするんでしょ。少しだけ肌に塗ったりして」
「あ、そっか。そんなんするんだっけ」
やっと思い出したように旬が言った。
「説明に書いてなかった? ちゃんと見たの?」
今までの工程は、旬が順序の説明書きを読んで、奈津美がそれの通りにやっていった。
「書いてなかったと思うけどー」
旬がケープの下から手を伸ばして説明書きを取り、目の高さまで上げて見る。それを奈津美ものぞき見た。
「……ここに書いてあるじゃない。『本品を使用する前に』って」
奈津美が説明書きを指さして言った。
最初の工程の説明の、更に前にそれが書いてあった。
「『本品が肌に合っているか確かめるために、付属のテスト用液で必ずパッチテストを行って下さい』って、ちゃんと書いてあるじゃない」
「へ? 付属の? そんなん入ってたっけ」
「知らないわよ。箱の中身全部出したのは旬でしょ」
旬は箱を取って逆さにした。すると、ポトッとパウチが箱から落ちた。
『パッチテスト用』と書かれている。
「もう……ちゃんと見てよ、怖いから」
奈津美は呆れてため息をついて言った。
箱から中身を出したのも旬だった。それを任せてしまったことが間違いだったのかもしれない。
「大丈夫だって。俺、別に肌弱いことないし。なんのアレルギーもないから」
そう言って大した問題でもないように笑う。
そんな旬に対して、奈津美はもう一つため息をついた。