続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
風呂場のシャワーを使って、奈津美は旬の髪のカラー剤を落としていく。
服を着たままなので、旬は湯を張ってない浴槽の中に入り、頭だけを洗い場の方に出して、奈津美がシャワーのかけて洗い流す。
「ちゃんと染まってる?」
旬が下を向いたまま聞いてくる。
「まだ途中だからわかんないよ。それより、大丈夫なの? 頭痒かったりしない?」
パッチテストをしなかったことを気にして、奈津美は旬に聞き返す。
「別にそれはないよ。それより今は、ナツの手がくすぐったい」
奈津美の手は、旬の耳の裏に触れていた。
「ちゃんと洗わないとダメなんだから、しょうがないじゃない」
「へへっ。何か人に頭洗ってもらうのって気持ちいいな。いつも店では思わないけど」
「人に洗ってもらって気持ちいいのは分かるけど……あたしがやるよりはプロの方が気持ちいいんじゃないの? あたし、人のは上手くできないから」
「んーん。ナツがやってくれてるってだけで気持ちいいんだよ。だから、全然違うよ」
旬は満足そうに言う。
「あー幸せ」
しみじみとした声で旬は呟いた。
「これだけで?」
あまりに大げさな言い方に、奈津美は笑った。
「これだけでも。俺、ナツに会ってから、幸せじゃなかったことなんてないよ」
「……それは嘘でしょ」
「……確かにそうかも」
そう言って旬は軽く笑った。
今まで付き合ってきて、流石にいつもうまくいっていたわけではない。
むしろ奈津美は自分勝手なことで何度も傷つけてしまっているのに、ずっと幸せなんて言い過ぎだ。
「でも、色々あったのに、ナツが側にいるから、やっぱり俺は幸せ者だなあって思うよ」
しみじみと旬が言った言葉に、奈津美は赤面する。
「もうっ。旬はオーバーなんだから」
誤魔化すように奈津美はそっけなく言った。
「あれ? ナツ、照れてる?」
「照れてない! ……はい! もうこれでいいかな」
奈津美はシャワーを止めて話を切ろうとした。
風呂場の戸を開けて、外に置いてあったバスタオルを取って、旬の頭にかけて軽く水気を取る。