続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
忍び寄る影(2)
「……でもさあ、髪型の変化とかに気付いてくれるのっていいわよね」
「は?」
昼休みのカオルの何の脈略もない発言に、奈津美の箸が止まる。
「何、いきなり」
「朝の話。旬君は髪型の変化とか、すぐ気付いてくれるんでしょ?」
「別にすぐってわけでもないけど……まあ、大体は。……何? 塚田さんは気付かない人ってこと?」
カオルがこんな風に言うのも珍しい。少し変な感覚で奈津美は尋ねる。
「気付かないっていうか……あれは宇宙人よ」
「は?」
カオルの不思議発言に、奈津美は目を丸くする。
「何それ、どういうこと?」
「例えば、髪型変えるでしょ? 何も言ってくれないのよ。まあ、そこまでならよくあることだからいいの。でも、こっちだって何か言ってほしいからね、言うのよ。そしたら『あれ? 変わったのってもっと前じゃなかったっけ?』って意味不明の発言するのよ」
「えっ……それって……」
それ以上の言葉は、言う前に止めた。
「うん、私も最初は思ったわよ。まさか他の女と間違えてるんじゃないかって」
奈津美が言おうとことを感じ取ったらしく、カオルは頷きながら言った。
「でも、私の分かる限りではそんな素振りなかったし、どうなのかは微妙だったの。だから、遠まわしに何と間違えてるのって聞いたのよ。そしたら、ちょっと考えて『あ、何か夢で見たことあるんだ』とか言うのよ。ちょっと怖くない?」
「怖いって……それってどういう風にいうの?」
「普通に言うのよ。別に浮気を誤魔化すための言い訳でもなく、キザにかっこつけて言うわけでもなく。まるで、昨日道ばたで友達と会ったんだ、って話をするみたいに」
「へえ……塚田さんてそういうこと言う人なんだ」
奈津美の中でのカオルの彼氏のイメージは、真面目で、しっかりしてて、どこから誰が見ても完璧な男、だった。
まさかそんな不思議発言をするとは思わなかった。