続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
忍び寄る影(3)
早く帰りたい。
歩きながら奈津美はひたすら思っていた。
仕事が終わってから、すぐに家に帰りたかった。
でも、今日はレンタルしていたDVDを返さないといけない。
昨日は見ることはなかったし、こんなことなら、一泊にして昨日返しておけばよかった。
今日は定時で終わり、夕方の街中なので、人は多い。
店もそんな中にあるので、何かあるという心配はないだろう。
しかし、そうなると、人の目が多すぎて、恐怖だった。
この中に、ストーカーがいるかもしれない。
この大勢の人間に紛れ、奈津美のことを見ているかもしれない。
そう思うと、その他大勢の人間全てが奈津美にとっては容疑者となってしまう。
早く帰りたい。
自然と歩く速度が早くなり、やっとのことで店に着いた。
奈津美は自動ドアから中に入ると、すぐにカウンターに向かった。
丁度タイミングよく空いていて、奈津美は鞄からDVDを出すとそこにいた店員に渡す。
そこにいた店員が受け取ると、中身を取り出し、チェックをする。
一枚だけなのですぐに済んで「結構です。ありがとうございました」と、営業スマイルを向けられた。
奈津美はすぐにカウンターを後にして、店から出ようとする。
自動ドアまで一直線に行こうとしたら、商品棚から出てきた人とぶつかった。
「きゃっ」
奈津美が思わず叫んだのとほぼ同時に、がしゃがしゃと床に何かが落ちる。DVDのケースだ。
「申し訳ございません」
ぶつかったのは、男性店員だったようだ。
慌ててしゃがみ、ケースを拾っている。
「あ……すみません」
奈津美もしゃがんでケースを拾う。
早く帰りたいが一心で、周りに注意が払えてなかった。
こんなところで人に迷惑をかけてしまうなんて、恥ずかしい。
「本当にすみませんでした」
奈津美は拾ったものを渡すと、店員の顔も見ずにすぐにその場を後にした。