続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
奈津美はぐっと自分の腕を抱き締めた。
携帯がまた震えた。フローリングの床を伝って、振動の音が大きくて、奈津美は肩を震わせた。同時に恐怖も感じる。
振動は、すぐに止まった。恐らくはメールだ。
また、メールが来た。
奈津美がそっと携帯に手を伸ばすと、自然と手が震えていた。
携帯を手に取り、画面を見る。
さっきと同じように、メール受信のアイコンに1の表示がされている。
奈津美はゆっくりとそれを押し、受信メール一覧を表示する。
しかし、そこに新たに並んでいたのは、旬の名前だった。
奈津美はそれを見て、あからさまに安心した。すぐに震えも止まって、メールを開いた。
『ナ〜ツ〜
もう仕事終わった?
俺は今からバイト行くとこだよー!』
絵文字が使われて、男の割にはカラフルなメールの文面だ。
いつも通りの旬からのメールなのに、奈津美は落ち着く。
旬からでよかった。
そして、奈津美はメール受信画面をけして、リダイヤルに切り替える。
一番上の旬の番号を表示して、通話ボタンを押した。
出るかどうかと思ったが、旬はいつも通り、ワンコール鳴り終わる前に出た。
「はい、もしもーし」
テンションの高い旬の声がする。
「あ……旬。今、大丈夫?」
いつも通りの旬に気圧されてしまいそうな感じがした。
いつもと違うのは、奈津美の方だけだ。それを忘れてしまいそうだ。
「うん。今、居酒屋向かってるとこだから。でも、珍しいな。ナツがメールに電話で返してくるって。俺は嬉しいけどさ」
旬の言うことに、奈津美はそういえば、と思う。
「今日は……旬の声聞きたかったの」
奈津美は恥ずかしいながらも誤魔化すために言った。
特にこれといった理由なんてなかった。突発的に、電話しようと思って旬にかけたのだ。
いや、あえて言うのなら、心を落ち着けて、安心したかったということだけだった。