続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「んー? 何ぃ? 可愛いこと言っちゃってー」
旬がからかう時の声色で言った。
「だ……だって……」
何かを言おうとしたが、その後は続かなかった。
ここで今、何を言えばいいのか、分からなかった。
「……ナツ、どうかした?」
旬の声が急に真剣なものになったような気がして、奈津美はドキッとした。
「えっ……何で……」
とっさにそう返すことしかできない。これでは様子がおかしいのはバレバレだ。
「何か……わかんないけど……やっぱ珍しいし」
やっぱり、旬には不自然さを隠せない。
カオルが言ってたことが頭に浮かぶ。
『――不安なら旬君にも相談しときなよ?』
旬に言うべきだろうか。
昨日から変なメールが来ていて、今朝はゴミを持っていかれたようで、それがストーカーの仕業なのではないかという疑いがあること。
正直に言えば、とても不安だ。
言ってしまって楽になれるのなら、言ってしまいたい。
しかし、言ったところでどうなる。
まだ、直接的な被害があったわけではなく、ストーカーだと確定したわけでもない。
それに、もしそうだとしても、なんとか対処できる範囲なのではないのか。
もしも今、旬にこのことを言ったら、旬にいらぬ心配をかけてしまうだけではないのか。旬のことだから、今すぐこっちに来るなんて言い出しかねない。
今からバイトに行くというのに。旬のバイトには、生活がかかっているというのに。
今の段階で、不必要な心配はさせるべきではない。だから、今はまだ言うべきではない。
「……電話したらダメだった?」
誤魔化すために奈津美は言った。自分でもずるいと分かってはいる。
「えっ……ううん! そういうんじゃなくて……つうか、電話くれたのは嬉しいし」
きっと電話の向こうの旬は、首を大きく横に振っているのだろうと安易に予想できるほど、旬の声は必死な様子だった。
旬だったらそう言って、もう聞いてこないというのは、大体分かっていた。
やっぱり、最低だ。
だけど、本当のことは旬には言えない。