続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「……ごめんね」
殆ど無意識に奈津美の口からその言葉が出た。
「ナツ……?」
「ごめんね。バイト前なのに。時間大丈夫?」
奈津美の口は、信じられないくらいあっさりと言い訳のように言いつくろっていた。
「あ、うん。大丈夫だよ。もうすぐ着くけど……でも、ナツの声きけてよかったかも」
「そう……?」
そんなことはない。奈津美の方が、旬の声が聞けてよかったと思ってるはずだ。
「うん。じゃあ、そろそろ着くから……バイト終わったらまた電話……あ、メールの方がいっか。今日は十二時過ぎるし」
「ううん。まだ起きてるだろうから、どっちでもいいよ。旬ができる方で」
十二時過ぎたころのやり取りといったら、きっと『おやすみ』ぐらいになる。
いつもなら、無理してメールも電話もしなくていいと言っている。
しかし今日は、それで連絡が無かったらと不安になって、それは言わなかった。
「わかった。じゃ、とりあえず、連絡はするから」
「うん。バイト、頑張ってね」
「ありがと。ほんじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
電話を切ると、寂しく感じた。
いつもならなんてことないはずなのに……奈津美が思っている以上に、神経が参っているのだろうか。
……大丈夫。大丈夫だから。
奈津美は自分に言い聞かせるようにして、携帯を握りしめた。
それからの怪しいメールは、おさまることはなかった。
朝、起きるのを見計らっているようにメールが入り、会社に着いて確認すると既に二通ほどメールが来ている。
昼休みの時点で数件入っているのも当たり前になっていて、帰る夕方から夜にかけてが一番メールがくるようになった。
月曜日から、今日の金曜日までに、明らかに悪化していった。